【第3回】

QIR20周年インタビュー
最も身近で信頼できる
研究成果発信の場

中里見 敬
九州大学大学院言語文化研究院 教授

中里見 敬 先生

pdf PDF版ダウンロードはこちら(内容は以下と同一です)

先生の研究内容について詳しく教えてください。

大まかな分野は中国語・中国文学です。中国文学の研究では、中国の特殊性を強調するものが多いことに疑問を持つところから始まりました。
私が学生だった1980年代は、欧米の文学理論が非常に盛んだったので、その研究手法や理論を使って中国文学を分析したい、世界のさまざまな文学と中国文学の共通性・普遍性に光を当てたい、というのが最初の動機でした。

その後、中国文学研究で使う一次資料の整理に興味を持つようになって、九州大学の図書館にある濱文庫という、中国演劇の資料の整理・研究に携わりました。濱文庫の資料は、QIRでも公開しました。

──中里見先生が登録されている論文「抒情的文言文 : 《玉梨魂》的敍事與文體」ですが、実は、QIRに登録されたAccepted Manuscript(著者最終稿)の中で、一番ダウンロードされているコンテンツです。

その論文は2006年に台湾のシンポジウムで発表したのですが、最終的に中国の学術誌に掲載されたのが2016年なので10年もかかりました。その間にリポジトリで読まれたのでしょう。
正式に雑誌で発表する前の段階ですが、リポジトリに登録することで「こういう研究をしている」という優先権を確保することができることは、研究者として大変ありがたいことです。

九州大学故濱一衛名誉教授(元分館長)蒐集の中国戯劇関係の和漢書939点(約2,500冊)で、戯曲関係のパンフレット、切り抜き、レコード、写真等も含む特色あるコレクション。

Accepted Manuscript(著者最終稿)とは
査読が完了し、出版社から受理される直前に
著者が提供した原稿のことです!

魚

QIRに登録するようになったきっかけを教えてください。

QIRが始まった頃(2006年頃)、論文の抜き刷りを図書館に持って行ったところ、すぐにPDF化したうえで登録していただきました。

当時、抄録やキーワードを図書館の方が作っておられましたが、それがとても適切だったのに驚きました。論文の内容を理解したうえでキーワードを抽出することは容易ではないので、図書館職員の専門性に感銘を受けたことを覚えています。

QIRへの登録がきっかけとなり、図書館職員の方々と親しくなるということもあり、その後も大変お世話になっております。

──QIRを通して図書館とのつながりが生まれて、継続的に登録されるようになったんですね。

QIRに登録する主なメリットは何ですか?

今回、自分が登録したコンテンツの国別ダウンロード数を教えていただいたのですが、中国からのダウンロードが全体の53%で、圧倒的ですね。中国語で書いた論文を、ダイレクトに海外の研究者に見ていただいているのは、とても大きなメリットですね。

濱文庫の整理を通して芝居番付や唱本といった特殊資料の目録を公開したのですが、このような論文以前のデータも、中国の研究者によく参照されています。
中国の学会に参加した時に、「九大のリポジトリであなたが公開した濱文庫関係のものは全部ダウンロードして読んでいます」と言われて、そこから共同研究につながったこともありました。

2019年に中国の芝居番付の展示会を図書館で開催したのは、その共同研究の一環です。濱文庫以外に、名古屋大学、慶應義塾大学、早稲田の演劇博物館と、日本で中国戯単を所蔵する4機関から出品いただいた展示会は、海外の演劇研究者からも好評をいただきました。
展示会の解説パネルやキャプションはQIRで公開しており、短い期間の展示会にお越しいただけなかった方にも雰囲気を味わっていただけるかと思います。日本語版より、中国語版の方が約2倍も閲覧されていますね。

──共同研究につながるという点は、リポジトリ登録のメリットとして普段から案内していますが、実際にこういうエピソードをお伺いできると、とても嬉しい気持ちになります。

海外の研究者にも研究成果を届けられます!

魚

QIRに関して印象に残っている出来事はありますか?

今回、自分が登録したコンテンツのダウンロード数を見せてもらいましたが、上位のコンテンツは、論文以外のものが多いです。

一番ダウンロード数が多いものは科研費の報告書(『呉語読本』音声データの作成と公開:論文・翻訳編(第1冊))の中の一篇で、上海や蘇州で話されている方言の「呉語」が出てくる文献の一覧「呉語文献書目札記」が2万回以上もダウンロードされています。当時、外国人教師として九大に在籍しておられた石汝杰先生の労作です。これも共同研究の成果と言えますね。

紙媒体としては全国の大学図書館で3館にしか所蔵されていないのですが、QIRに登録したおかげで、多くの研究者に利用してもらえたようです。
文献一覧という研究の種になる資料を、こんなにたくさんの人に使っていただけたことに、改めて驚きました。

論文ではないので普通は埋もれてしまう資料を、QIRで公開する意義を感じました。

──論文だけ登録される先生も多いですが、中里見先生は、会議発表論文や研究報告書など、いろいろな資料を登録されています。

研究成果として一般的には論文が評価されますが、QIRに登録することで論文以外のものも見ていただけるのがとてもありがたいです。ダウンロード数を出していただいたことで、資料的なコンテンツが多く見ていただけていることを発見できて、こちらも嬉しかったです。

今後のリポジトリに期待することは何ですか?

まもなく定年退職を迎えるので、論文を書くことはなくなると思いますが、もし今後も資料整理などに携わる機会があれば、その成果をリポジトリをとおして公開させていただければありがたいと思います。
どのような形でQIRに登録できるのかを教えていただきながら、将来の研究者に役立つような研究資料を残していきたいと思っています。

──一次資料となると、著作権や個人情報の問題があり、先生と一緒に確認しながら作業を進めていくようなところがあります。今後も一緒に進めていければと思います。

論文以外の研究成果も登録出来ます!

魚

若手研究者や学生に向けて、リポジトリ活用のアドバイスはありますか?

分野を問わず、ネット上で論文を探すことが定着しています。皆さんも多くの場合、データベースや他大学のリポジトリから論文をダウンロードして入手していることでしょう。
あわせてご自身の研究成果もリポジトリに登録することで、研究者相互の助け合いが成立するのだと思います。九大に所属する研究者として、QIRは最も身近で信頼できる研究成果発信の場だと感じています。

最後に、20周年を迎えたQIRにお祝いメッセージをお願いします。

安定的に、永続的に成果を発表できる場として、これからも長く続けていただくことを期待します。

──継続的にサービスを提供できるよう、努力して参ります。 本日はお忙しいところありがとうございました。

(インタビュー後に中里見先生、リポジトリ係、OAサポートチームメンバーで記念撮影)

インタビュー実施 2026 / 4 / 22

 

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