【第4回】

QIR20周年インタビュー
いつか必要とする誰かに
研究を届けるために

南野 森
九州大学大学院法学研究院 教授

南野 森 先生

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先生の研究内容について詳しく教えてください。

憲法学の基礎理論や原理論を研究しています。憲法とは何か、なぜ必要なのか、主権はどういうものかなど、そういう、一見してすぐに誰かの役に立つものではない、哲学的な話をずっとやっていますね。
ただ最近は、憲法が政治の話題になっており、社会的関心の高まりもあって取材や講演依頼を受ける機会が増えました。対外的な発信の仕事はここ10年ほど多くなってきていますね。

──先生のホームページを拝見しましたが、確かにメディア対応が多いですね。

憲法関連というだけで、様々な論点で依頼が来るので、都度その論点について勉強して答えています。

──X(旧Twitter)でも頻繁に発言をされていますが、先ほど話題にもあった、対外的な発信を意識されているのでしょうか?

私が15年ほど前からXをしている理由は二つあります。
一つは、私が教えている学生向けの情報提供です。もう一つは、世の中の問題について憲法学の観点から発言するためです。憲法は、最終的には国民が決めるものなので、Xを見ている人に憲法への理解を深めて欲しいという気持ちでコメントしています。

──憲法学をみんなに知ってほしいという意識なのですね。
オープンアクセスは多くの方に論文を読んでもらえることがメリットですので、先生の意識ともマッチしていると思いました。 

オープンアクセスとは、学術情報を
インターネットを介して無料でだれもが自由に
利用できるようにすることです

魚

QIRに登録するようになったきっかけを教えてください。

そもそものきっかけは覚えていないのですが、私の最初の論文(修士論文)が掲載された雑誌はすでに入手が難しくなっており、せっかく書いた研究を読める形で残したいという思いからリポジトリで公開しました。法学分野は発表媒体が様々であるため、リポジトリで著作を集約できる意義は大きいですね。

今は学生の文献探索も、良し悪しは別として、インターネット中心です。検索で見つかるオープンアクセス文献への依存が強まる中、私自身がリポジトリで研究を公開してきたことは結果的によかったと感じています。

──学生の文献探索はインターネット中心とのことですが、ジャーナルを読まなくなってきているということでしょうか。 

ジャーナルには割とアクセスしている印象ですが、記念論文集などの図書は、目次が公開されていないと収録されている内容がわからないですよね。我々プロの研究者になると、本のタイトルからこういうテーマの論文が収録されているんじゃないかと勘が働きます。ですが、学生が検索に引っかからない文献を見つけるのは、結構大変な気がします。

──今のお話を受けて、リポジトリのメタデータ(書誌情報)に、アブストラクトや主題、キーワードを入れるのは大事だと感じました。 

これからの時代はAIが拾ってくれたら、検索にも上がりやすいですし、便利ですよね。
海外の方々が、日本語で書かれた文献にアクセスする時にも、リポジトリは非常に有意義です。
また、フランスでも絶版になってしまった本に収録されていた私のフランス語論文が、海外の博士論文で多数引用されていて驚いたことがありました。どうやって私の論文にアクセスしたかというと、QIRに掲載していたから、たまたま検索に引っかかったんじゃないでしょうか。

──その学生が先生の論文をたくさん引用しているということを、先生はどうやって知ったのでしょうか?

たまたまその方の博士論文が出た時に、タイトルを見て、関心のあるテーマだと思って買ったんですよ。パラパラと見てみたら、自分の論文が何カ所も引用されていました。これは本当にQIR様様ですね(笑)
法学の研究は何の役に立つかと言われると難しいですが、すぐに、ということでなくとも、いつか何か必要とされた時に誰かの役に立つことのある学問だと思います。だから、自分の書いた研究が必要とされる誰かに届く喜びはありますよね。

──QIRでの文献公開を通して、先生のいつか誰かのための研究が、今、役に立っているのが可視化されたわけですね。お話を伺って感動しました。

QIRに登録した論文はAIにも読まれます!

魚

若手研究者や学生に向けて、リポジトリ活用のアドバイスはありますか?

若手研究者は絶対にリポジトリを活用した方がいい。これは間違いないですね。
これからは紙よりもPDFで研究を公開する流れがますます進んでいくでしょう。先ほどの私の話のように、思いもよらないところで自分の書いたものが役に立つきっかけにもなりますので、リポジトリを使わない手はないですね。
また、研究者は大学からお給料をもらって研究や論文作成をしているので、還元という形で論文を無料で読みたい方に届けることは重要だと思います。

──海外ジャーナルの購読料の値上がりに対抗するために、リポジトリは文献を無償で公開している側面があります。社会的還元もリポジトリの大きな意義があると思いますので、言及していただいて嬉しいです。

一方で、リポジトリの方向性には矛盾するようですけれど、インターネット上で公開されているもの以外にも論文はたくさん存在することは、繰り返し伝えたいです。

今後のリポジトリに期待することは何ですか?

現状の機能でも満足していますが、例えばインデックス機能でしょうか。先ほどの話の延長にもなりますが、アブストラクトやキーワードを掲載したり、目次を章ごとに記載してくれたら、何が書かれているのかあたりを付けやすくなるでしょうね。
タイトル・著者名・媒体名のみの記載では、やや情報として不十分な時があるので。

生成AIなどを活用し、詳細情報をリポジトリに記載できれば便利かもしれません。その場合「間違いを含む可能性があります」といった注意書きを必ずつけるようにすればいいと思います。

──ありがたいアドバイスをいただき、大変励みになります。

QIRは非常に使いやすいし、ダウンロード数がちゃんと確認できるのは嬉しいですね。
部局によるQIRの活用状況の傾向や違いはありますか?

──工学系は利用率が高く、英語・日本語どちらの文献の掲載もあってQIRへの登録が根付いている感じがします。
最近では芸術工学系の利用も多いですね。QIRでは作品集や研究データ、ソフトウェアの登録もできますので、そういった論文以外の登録が増えている印象です。 

QIRに登録した、研究データやソフトウェア
にDOIを付与することができます!

魚

最後に、20周年を迎えたQIRにお祝いメッセージをお願いします。

QIRを支えてくださっている職員さんに感謝ですね。出版社・版元や教員とのやりとりなど複雑なこともあるでしょうが、純粋な意味で世の中のためになっている仕事だと思います。
紙の出版だけでは出会えない読者や、同じ分野の学者に出会えるツールでもあるので、もっとリソースを割いて、快適な職場環境でQIRを維持していただきたいと思います。
あといつまでもこのQIRのシステムを残していただきたいです。

──図書館としても、永続的にQIRを維持させていきたいです。本日はお忙しいところありがとうございました。 

(インタビュー後に南野先生、リポジトリ係の平野さん・大澤さんで記念撮影)

インタビュー実施 2026 / 6 / 1

 

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