【第2回】

QIR20周年インタビュー
研究成果を社会へ広げる
「リポジトリ」の可能性

福田 千鶴
附属図書館 副館長
九州大学大学院基幹教育院 教授

福田 千鶴 先生

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先生の研究内容について詳しく教えてください。

歴史学の中でも日本近世史を専門にしています。色々な研究をしましたが、例えばお家騒動や武家社会の研究、また近年では鷹狩の研究もしています。
その中でも一番やりたい研究が、豊臣秀頼が果たした政治的な役割です。今後まとめていきたいなと考えているところです。

──先生が執筆された「大坂冬の陣開戦までの西国大名の動向 : 黒田長政・島津家久を中心に」はよく読まれていますね。

ダウンロード数が多くて驚きました。授業の参考文献にはしていないので、純粋に読んでいただくためのダウンロード数だと思います。
(歴史学の研究者の数は)大体15,000人くらいではないかと言われています。その中で8,854件ダウンロードがあるというのは、研究者以外の方にも読んでいただいているのだろうと思います。

リポジトリを活用したエピソードや印象に残っている出来事を教えてください。

「鷹・鷹場・環境研究」という雑誌を出版した際、それを図書館に納めたら、「リポジトリで公開しませんか」と案内されたことが最初でした。
その雑誌には写真などもたくさん載っていたので、著作権関係が不安で、最初は画像にシールを貼って提出しました。ただ、図書館の方ですぐに画像の権利関係を調べていただいて、「これはフリーに使える画像なのでマスキングの必要はない」とのことで、画像をそのまま載せました。

──個人情報などの許諾できないものは一部を隠して掲載することもありますが、先生との最初のやり取りでは問題なく掲載できたということですね。

図書館で著作権をお調べします!

魚

若手研究者や学生に向けて、リポジトリ活用のアドバイスはありますか?

リポジトリは、現状過渡期なのかなと感じております。(論文を読む側の)使い方の倫理を打ち立てていかないと、学問の場が混乱すると思いますので、若い方にきちんと伝えていくことが重要だと考えています。

──それは研究において何を参照するか、といったことなどでしょうか?

そうですね。私が大学院生の時は論文のコピーに半年~1年くらいかかることもありました。現在は検索したらすぐに文献を入手出来て便利だと思います。その時間を活用してぜひ色々なことを考えたり、書いたりしてほしいです。
逆に、論文を入手するモチベーションが下がっている傾向があるとも考えます。本来はオンラインで公開されていない資料を入手すべきでも、オンライン公開分の資料を集めて終わり、のように便利さに流されることがないように、きちんと学問を積み重ねてほしいなと思っています。

──孫引きなどにならないように、ちゃんと原典にあたって文献を適切に利用してほしいということですね。

今後のリポジトリに期待することは何ですか?

リポジトリの登録件数が増えることは大変便利ですので、そうなってほしいとは思っています。
一方で、学会活動への影響があります。私も学会活動をしていますが、会員が会費を払って雑誌を買わなければならない理由は何か、と学会自体の運営が難しくなっている状況があります。ですので、学会誌をリポジトリに登録するうえでのルール作りに期待しています。
リポジトリに登録すれば便利ですが、そうすると成り立たなくなる学会活動がありますので。

──学会誌をリポジトリで公開する際、エンバーゴ(公開禁止期間)を設定して会員の方が優先的に新しい号を読めるように工夫しているというお話も聞きます。
もともとオープンアクセス運動は海外のジャーナルの購読料が高くて払えないところから立ち上がっています。中小の学会の経営を苦しめるのと、表裏一体の部分はあったのかもしれませんが、論文を買える人と買えない人の隔たりを縮めるためのオープンアクセスという流れはありますね。

そういった、文献の入手しやすさの隔たりを縮める意味でのオープンアクセスには大きく期待しています。

リポジトリは
オープンアクセスの手段の1つです!

魚

最後に、20周年を迎えたQIRにお祝いメッセージをお願いします。

おめでとうございます。九州大学のリポジトリ(の創立時期は全国的に)は早かったのではないですか?

──そうですね。

私が九州大学に着任する前、九州大学の先生がリポジトリで文献を公開すると言っていて、そういうシステムがあるのは素晴らしいなと思った記憶があります。例えば資料集を出したいと思っても、なかなか出版社が引き受けてくれないんですね。出版社が引き受けにくいものをみんなが見られる環境を作っていくという意味においても、基礎研究を発表していく場としても、リポジトリというのは大きな活躍の場を与えているのではないでしょうか。
リポジトリ専門委員長として(図書館と)一緒に、全国の先駆けとしてリポジトリを立ち上げた勢いを失わずにこれからも、私も頑張って旗を振っていきたいと思っております。

──今の先生のお言葉を受けて、図書館としてもリポジトリの発信を頑張っていこうと思いました。本日はお忙しいところありがとうございました。

(インタビュー後に福田副館長、リポジトリ係、OAサポートチームメンバーで記念撮影)

インタビュー実施 2026 / 4 / 17

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