第6章 杏仁医館文庫



【杏仁医館(きょうにんいかん)文庫】

 杏仁医館文庫は、直方市にあった杏仁医館(岩熊医院)の医師であり、医史学者であった岩熊哲(いわくま とおる)(医学部内科学教室卒業、1899~1943)の旧蔵書で、和漢洋にわたる貴重な古医書が多い。
 九大医学部での医史研究の存続・発展を願う岩熊氏の遺志を尊重し、その蔵書を医学部で引き継いだ。当初は解剖学教室に保管されていたが、現在は医学図書館に保管されている。

12. ヴェスリング『解剖学の体系』

Johannes Veslingius: Syntagma anatomicum.
Amstelodamum, 1659
九州大学医学図書館所蔵 (杏仁醫舘文庫/V 578/1659) 【 精細画像

解剖学の体系

 ヴェズリング(Johann Vesling, 1598~1649)はパドヴァ大学の教授として解剖学の講座を担当していた。『解剖学の体系』は日本にも伝わり、小杉玄適と山脇東洋らによって1754年に日本初の人体解剖が行われた際にこの本が用いられたと言われている。



13. 吉雄耕牛『纆帛法図巻』

吉雄耕牛「纆帛法図巻」[書写者不明]、[1---]
九州大学医学図書館所蔵 (杏仁醫舘文庫/Y 92)【 精細画像

纆帛法図巻

 吉雄耕牛(1724~1800)は江戸中期の長崎にて出島オランダ通詞・蘭方医を務めていた。7枚の図で構成されたこの本には、包帯の巻き方、医用器具などがスケッチされている。題簽下部に「関場博士所贈」と印字があり、北海道医学界の中心的人物であった関場不二彦(1865~1939)旧蔵本からの摸写の可能性がある。



14. 重訂解軆新書銅版全図

「重訂解軆新書銅版全図」、文政9[1826]年發兌
九州大学医学図書館所蔵 (杏仁醫館文庫/Su 46)【 精細画像

解体新書

 『重訂解体新書』は、杉田玄白らにより訳出された『解体新書』の改訂版である。杉田玄白の命を受けた高弟の大槻玄沢(1757-1827)によって、より正確な内容に改訂された。
『解体新書』(1774年刊)の出来ばえについては杉田玄白らが満足ではなかったので、玄白の高弟の大槻玄沢は序・付言・旧序・凡例を載せた第一冊の他に本文四冊、名義解六冊、付録二冊より成る『重訂解体新書』を書き上げた。図版は京都の中伊三郎による銅版画。





参考資料

相部久美子. 医史学研究者岩熊哲の旧蔵本-「日本医学史覚書」-. 九州大学附属図書館研究開発室年報, 2019, p.28-36.

ミヒェル・ヴォルフガング.(III)新世界の探検. 九州大学附属図書館企画展「東西の古医書に見られる身体」-九州大学の資料から-.

九州大学附属図書館, 重訂解体新書銅版全図―精密な解剖図―『九州大学附属図書館 狩野亨吉と九州大学: 古医書』


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