知をつむぐ ー東西の古医書ー

知をつむぐ ー東西の古医書ー


このページは医学図書館にて開催の「知をつむぐ ―東西の古医書―」(令和5年8月1日(火)~10月31日(火))を電子展示として再構成したものです。

はじめに

 九州大学の歴史は、京都帝国大学福岡医科大学が九州帝国大学医科大学となるところから始まります。当時の教授陣には、ペースメーカーの父とされる田原淳、日本住血吸虫の中間宿主であるミヤイリガイを発見した宮入慶之助、耳鼻咽喉科学の先駆、久保猪之吉など、錚々たる人物が名を連ねていました。当館所蔵の貴重古医書コレクションは、彼らをはじめとする歴代医学部教授たちが、医学の発展の歴史に強い関心を寄せ、広い視野と高い見識に基づき収集した資料を基礎とします。第三内科初代教授小野寺直助のもとで収集された多数の医書類や眼科学教室・解剖学教室収集の古医書など、まさに九大の百年を超える知を象徴する国内最高水準のコレクションです。

 附属図書館では、こうした本学の代表的な貴重書および資料群をより広く知っていただくことを目的として、冊子『知をつむぐ―九州大学の書物たち―』を発行しています。今回の展示では、この『知をつむぐ』に掲載した東西の古医書を中心に、当館所蔵コレクションの一部(約20点)をご紹介します。

 西洋医学の精巧な図譜、東洋医学のユニークな描写、東西の交流の歴史を感じられる資料など、当館ならではのコレクションをお楽しみください。


協力 ヴォルフガング・ミヒェル 九州大学名誉教授

第1章 万物の舞台

 『ムセウム・ムセオルム(Museum Museorum)』は、1704年にフランクフルトで印刷された辞典である。副題に「万物の舞台」とあり、銅版画の挿し絵がふんだんに織り込まれており、フランス人ピエール・ポメー(Pierre Pomet)の『薬及び香辛料の信頼できる販売業者』と並び、世界の医薬品関連の情報源として当時の最も重要な書であった。
 この著書にはTerra Japonica [阿仙薬]、Kaiserthee [玉茶]など日本からの医薬品もいくつか取り上げられているが、特に言及すべきものは銅版画の挿し絵のある灸(Moxa)についての章である。ヴァレンティーニの解説に合わせて画家が彫った挿し絵には、灸を据える治療点やモグサに火を付けるための線香が見られる。

 九州大学医学図書館には初版(第三内科教室旧蔵)と第2版(ミヒェル文庫本)があるが、版によって顔や背景の木など微妙に違いが見られる。

1. ヴァレンティーニ『万物の舞台』【1704年 第三内科教室旧蔵】

Michael Bernhard Valentini: Museum museorum, oder Vollständige Schau-bühne aller Materialien und Specereyen.
Frankfurt am Main, 1704
九州大学医学図書館所蔵(WZ 260/V 161/1704) 【 精細画像

万物の舞台(1704)


2. ヴァレンティーニ『万物の舞台』【1714年 ミヒェル文庫本】

Michael Bernhard Valentini: Museum museorum, oder Vollständige Schau-Bühne aller Materialien und Specereyen. 2. ed.
Frankfurt am Main, 1714
九州大学医学図書館所蔵(ミヒェル文庫/229/1714) 【 精細画像

万物の舞台(1714)



参考資料

ミヒェル・ヴォルフガング.「ミヒャエル・ベルンハルト・ヴァレンティニ」, Kyushu University Medical Library: Collection of Old Medical Books Pictures and Comments


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