第4章 眼科教室旧蔵本



【眼科教室旧蔵本】

 九州帝国大学眼科教室初代教授の大西克知(おおにし よしあきら) 博士(1865~1932)により収集されたコレクション。
 大西克知は、九州帝国大学の前身である京都帝国大学福岡医科大学の初代眼科教授を務めた人物である。海外視察の成果を盛り込みつつ、眼科教室棟を自ら設計した。世界有数といわれる規模を誇った眼科教室の基盤を作った。
 コレクションは和漢洋に渡る膨大な文献で構成されている。特に5000冊を超える和漢古医書が特徴で、そのほとんどが大西と親交のあった狩野亨吉(かのう こうきち)からもたらされたものである。また、洋図書には眼科学専門書や、明治時代半ばに発行された視力検査表なども含まれている。
 狩野亨吉は近代日本を代表する思想家・教育家・蒐書家であり、旧蔵書は医学図書館のみならず九州大学中央図書館、東北大学附属図書館、東京大学駒場図書館、京都大学総合博物館に収められている。

6. 五臟之守護并虫之図

「五臟之守護并虫之図」[書写者不明]、[書写年不明]
九州大学医学図書館所蔵(和漢古医書/コ-25) 【 精細画像

五臟之守護并虫之図

 寄生虫や寄生虫が原因となって起こる病気の研究が進歩する以前から、しばしば想像上の虫が病気の原因ととらえられてきた。本書は九州国立博物館所蔵『針聞書』と同じく、大変ユニ-クな虫を描いた江戸期の写本である。「五臟之守護并虫之図」4葉半と「五臓六腑砕之次第之明鏡」6葉半の2部で構成されている。前半は五臓に宿る五仏と体内に巣くう18種の虫が列挙され、後半は内景図とその解説が記されている。



7. 和蘭金瘡

「和蘭金瘡」[成立年不明]、[書写者不明]、[書写年不明]
九州大学医学図書館所蔵 (和漢古医書/オ-26)【 精細画像

和蘭金瘡

 江戸時代、長崎出島のオランダ商館医を通じて、西洋医学が日本に伝えられた。紅毛流医学や蘭方医学と呼ばれる。本書は紅毛流外科の写本の一つで、中医(中国医学)風の腫れ物図が附されている。植物病理学者・本草学者白井光太郎(1863~1932)旧蔵書である。



8. バルティッシュ『眼科外科書』

Georg Bartisch: Augen-Dienst, oder, Kurtz und deutlich verfasster Bericht von allen und jeden in- und äusserlichen Mängeln, Schäden, Gebrechen und Zufällen der Augen.
Sultzbach, 1686
九州大学医学図書館所蔵 (貴重書/眼科教室/1)【 精細画像

眼科外科書

 ドイツ・ザクセン選帝侯の宮廷眼科医バルティッシュ(1535~1606)は、初めて眼球摘出手術を行った。本書は当時の外科手術の様子が49枚の絵に仔細に描かれている。眼科学において初めて、本文とイラストが密接に結びついている。




参考資料

九州大学附属図書館, 狩野亨吉と九州大学: 古医書

ミヒェル・ヴォルフガング, 「外科処置」東西の古医書に見られる病と治療-附属図書館の貴重書コレクション


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