展示スペース「中村哲医師メモリアルアーカイブ」

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中村哲医師メモリアルアーカイブ

九州大学では、中村哲氏の活動母体であったペシャワール会との相互協力協定を締結し、同会協力の下、「中村哲先生の志を次世代に継承する九大プロジェクト」を立ち上げました。本プロジェクトの核となる展示スペース「中村哲医師メモリアルアーカイブ」は、2021年3月にオープンしました。
本スペースは、映像、グラフィックス、年表、書籍等で氏の言葉と活動を伝え、ガラススクリーンには、本学の学生らが読書会を重ねる中で選んだ言葉が綴られています(「中村哲医師メモリアルアーカイブ」案内リーフレット)。

繋ぐ空間

ひとつの小さな空間体験により、中村哲先生が描こうとした世界を感じていただきたいと考えました。また、その世界を「屏風絵」のように表現しようと試みました。
ここでは、浮遊し透過する「屏風絵」に包まれることで、その世界の、拡がり、深さ、連なり、奥行きなどを捉えていただこうとしています。
この小さな空間体験は、以下のコンセプトにより映像・音・本とその相互作用 で構成されています。

展示スペース1




1.「一人称」のメッセージ
中村哲先生自らの「言葉」と「視点」

2.「拡がり」へのタッチポイント
共感を呼び起こす世界への拡がりへの出発点

3.「探求」へのエントランス
「医」「水」「農」をキーワードとする知的世界への探求の入口



展示スペース2

ガラススクリーンには活動の場を連想するアフガニスタンの山々を浮かべ 、そして屈曲するメッセージ・スクリーンとしての「屏風絵」には中村哲先生自らの言葉が浮かびます。
わたしたちは、自らの意志で境界のない世界をさまよい、自らの身体で探索・発見し、そして人々とともに新しい世界をつくっていきます。このメモリアル・アーカイブは、中村哲先生の単なる業績紹介のためではありません。
ふつうでは到底とらえきれない、そして見えないことも意識する、その世界へと「繋ぐ空間」です。
この小さな空間体験が、学生のみなさんの将来の財産となることを期待しています。

芸術工学研究院教授 田上健一


学生が選んだ言葉

展示スペースのガラススクリーンには、九州大学の学生たちが中村先生の著書から抜粋した文章が並び、あたかも中村先生が一人ひとりに語りかけるように心に響きます。
文章の選定にあたっては、学部1年生から大学院博士課程3年生までの学部も年齢も異なる5名の有志の学生が集まり、著書を読んで語り合う読書会を実施しました。読書会では、学生が将来の指針にしたいと思う、心に響く言葉がたくさん挙がりました。

病気は後で治せる。ともかく生きのびておれ!
(『医者、井戸を掘る』p10)

アフガニスタンの人々の落命の原因は、多くが清潔な飲料水の不足という医療以前の問題であることを知りました。そして、私たちは普段不自由なく生活できていることに感謝し、同時に世界中にはアフガニスタンのように厳しい生活状況の中で必死に生きている人が多くいるという事実に目を向けて、考えなければならないと思いました。(細谷うらら・九州大学医学部)

私の意図は、目前にした事実を伝え、平和を願う意志を理屈から力に転化することであった。観念の戦いは不毛である。平和は戦争以上に積極的な力でなくてはならぬ。
(『医者、用水路を拓く』p34)

非常時に抽象論は力を失い、混乱した群衆が弱い立場の人々を傷つける。平和を取り戻すのは命がけの行動になる。空爆がはじまるアフガニスタンで中村先生らを救援活動へ突き動かしたものは「論理を超えた自然の衝動」でした。彼らの力は私の想像を超えていますが、他者を守るために、私たちはもっと力を発揮できるのだという事を教えられている気がします。(高濱良・九州大学農学部/大学院生物資源環境科学府)


この八年間、いや、この数ヶ月の労苦を知る者は、陽光にまばゆい一本の麦の穂にも、子供たちの一つの笑顔にも、万金に値する貴さをかみしめることが出来ただろう。労苦の痕跡は、心中に見えざる人の温もりとして残るのみである。そして、それでよいのだ。
(『医者、井戸を掘る』p134)

何かを成し遂げたとき、それまでの自分の努力や苦労を知っている人は必ずいて、それらをあえて目に見える形として残す必要はないという、中村先生の謙虚さを自分も見習いたいと思いました。自分が何かを見るときには、温かい心を持つことで「麦の穂」のような小さなことにも価値を見出せるようになるのではないかと考えました。(細谷うらら・九州大学医学部)

「良い経験になった」などというセリフは止せ。君らのロマンや満足のために仕事があるのではない。ともかく結果を出せ。
(『医者、用水路を拓く』p177)

中村先生が現地の人々のためにご活動されたことを顕著に表す言葉だと理解しています。さらに、彼が現地の人々の信頼を得ることができた一因となる言葉だと思い、意義深く感じます。私は共創学部に所属していて、将来人道支援に携わることも考えていますが、その際、目的を見失いがちな私にこの言葉は喝を入れてくれると思います。( 岡本偉吹・九州大学共創学部)

尽きぬ回顧の中で確かなのは、漠漠たる水なし地獄にもかかわらず、アフガニスタンが私に動かぬ「人間」を見せてくれたことである。
(『医者、用水路を拓く』p24)

アフガニスタンの人々が動かぬ人間であるのに対して、我々は大地から足が浮いてしまった人間。つまり、我々の文明は発展と同時に自然との向き合い方を忘れてしまったということです。しかし、本来の人間の生き方はそうではなくて、中村先生が目にしたような、常に自然と向かい合ってひたむきに生きる人間の姿だということをいつも心に留めておきたい。(川藤知恵・九州大学工学部/大学院統合新領域学府)

正義・不正義とは明確な二分法で分けられるものではない。敢えて「変わらぬ大義」と呼べるものがあるとすれば、それは弱いものを助け、命を尊重する事である。
(『医者、用水路を拓く』p31)

中村先生は何が正しいのかという事にとらわれず、目の前の人を一人でも多く助ける事こそが自分自身の大義であるという信念の下、医療活動にとどまらず様々な活動をされていたのではないでしょうか。この言葉は、そんな中村先生の熱く優しい、無私な心を私たちに教えてくれると思います。(村口大知・九州大学医学部)


映像の紹介

【人間は愛するに足る。真心は信ずるに足る】

ヒンズークシュ山脈最高峰ティリチミール登山隊の医療チームへの同行から中村医師の挑戦が始まった。医療の行き届かない辺境地域への 巡回診療 、診療所の設置、そしてペシャワール会の募金活動による拠点病院の建設と、医療体制の充実に尽力した。

【100の診療所より1本の用水路】

しかし、医療だけでは解決できない現状、荒れた地に人々の生活を取り戻すために、井戸を再生し、さらには無謀ともいわれた用水路の建設 を実現 した。干上がった荒地は、緑豊かな大地へと変貌し、中村医師の 建設 した用水路は現在、65万もの人々の生活を支えるに至った。こうした中村 医師の現在に至るまでの功績を、日本電波ニュース社が長期にわたって現地で記録してきた映像資料と中村医師が遺した言葉で紡ぐ 。

芸術工学研究院准教授 石井達郎




著作展示

展示スペースには、中村哲医師の著作や関連書籍も展示しています。
貸出もできます(禁帯出資料を除く)。

中村哲著述アーカイブ > 氏の著書一覧

メモリアルアーカイブ展示資料(九大所蔵)へのリンク



展示スペース「中村哲医師メモリアルアーカイブ」は、九州大学中央図書館きゅうとコモンズの開室時間中、自由にご見学いただけます。

2021年3月21日に開催しました「中村哲医師メモリアルアーカイブ オープニングイベント」の様子をYouTubeで公開しています。
中村哲著述アーカイブ」では、氏が生前に書き著した文章や発した言葉をデジタルデータの形で収集・保存し、公開しています。



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