第5章 耳鼻咽喉科教室旧蔵(医学図書館所蔵)

 

【耳鼻咽喉科教室旧蔵(医学図書館所蔵)】

 久保は耳鼻咽喉科教室に在任した1907-1935の間に多くの古医書を購入している。現在その多くは久保記念館で保管されており、一部は医学図書館の貴重書庫に保管されている。

ケンペル『日本誌』

composée en allemand par Engelbert Kæmpfer ; & traduite en françois sur la version angloise de Jean-Gaspar Scheuchzer, ouvrage enrichi de quantité de figures deffinées d'apres le naturel par l'auteur même : Histoire naturelle, civile, et ecclesiastique de l'Empire du Japon.
A La Haye : 1729
九州大学医学図書館所蔵(D/K 11/v.1/1729)【 精細画像

ケンペル『日本誌』
ケンペル『日本誌』

 Engelbert Kämpfer (1651-1716)は、ドイツの博物学者、医師。元禄3年(1690)長崎出島のオランダ商館長付医師として赴任し、約2年間の滞日中に2回江戸参府に随行する。日本での地理、風俗、動植物などの観察記録をもとに『廻国奇観』『日本誌』を著した。
 『日本誌』は英語で刊行された後、フランス語訳、オランダ語訳も刊行された。

 


 

梶原性全著『萬安方』 

梶原性全撰 : 萬安方
九州大学医学図書館所蔵(和漢古医書/マ-26)【 所蔵情報

萬安方
萬安方

 梶原性全(1266-1337)は名医として世に知られたようだが詳細は不明である。本書のほかに『頓医抄』を著している。
 『萬安方』は鎌倉時代の医学全書であり、漢魏唐宋の経験方及び自家試験をして得られた処方を集載している。特に『聖済総録』に多く出典を求めている。内容は医薬学領域全般を網羅する。本書の巻19に眼鼻耳、巻20に歯口喉唇の記述がある。

【蔵書印】  
「閻魔庵圖書部」「岡本蔵書」……岡本閻魔庵(久次郎)は横浜の実業家で大正時代の著名な蒐集。
「温知社圖書記」……温知社は、山田業広(1808-1881)が中心となって結成した漢方医団体。

 


 

山本玄仙撰『萬外集要』

萬外集要
寛永19 [1642]
九州大学医学図書館所蔵(和漢古医書/マ-47)【 精細画像

萬外集要

 『萬外集要』は初版が寛永19年(1642)に刊行された南蛮流と我が国の医術を取捨した和洋折衷の外科書である。
 本書は後に写されたもので、前半に病症、後半に薬方を載せる。

 


 

『阿蘭陀諸腫物仕掛之書』

九州大学医学図書館所蔵(和漢古医書/オ-30)【 精細画像

阿蘭陀諸腫物仕掛之書
阿蘭陀諸腫物仕掛之書

 江戸時代に蘭学が盛んになり、西洋の医書が和訳されるようになった。本書もそうした翻訳本の一つとみられる。耳鼻咽喉科に関する項目として、「柘榴鼻之事」「鼻茸療治」「喉痺」「耳痛止ル事」の記述がある。
 久保は洋行のたびに美術館を巡っていたが、いつも耳と鼻に注目して美術品を見る習慣があった。ルーブル美術館でギルランダイオの「老人と少年」の絵画を見た時も老人の「世にも珍しい柘榴鼻でデコボコとして赤い偉大な鼻」に着目している。

 


 

『稀書複製會叢書』

九州大学医学図書館所蔵

稀書複製會叢書
稀書複製會叢書

 稀書複製會は、主事を山田清作(米山堂)として、市島謙吉、和田萬吉らで結成。徳川初期より元禄前後に至る古版本の中から稀覯本、自筆稿本や名著草稿は専ら文藝に関するものを選んで、内部の本文版式のみならず外部の装丁も原本のままに複製した。大正7年(1918)創設以来、8期、16年にわたって233部329冊の図書を複製し同好の会員に頒布した。
 医学とは直接関係のない叢書であるが、医療に従事する者は日本の慣習や文化、文芸など幅広い知識を持つ必要があるという久保の見識が表れている。

 


 

 

 

サイト内検索