『中村哲九大プロジェクト5周年:未来への水脈―問いをひらく』 アーカイブ動画を公開

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2026年3月に九州大学で開催したイベント『中村哲九大プロジェクト5周年:未来への水脈―問いをひらく』の講演等の動画を、附属図書館公式YouTubeチャンネルで公開しました。

アーカイブ動画はこちら(YouTube)▶

中村哲九大プロジェクト5周年:未来への水脈―問いをひらく

九州大学では、遠いアフガンの地で35年にわたり医療・水事業・農業に心血を注いでこられた故・中村哲医師(1946-2019、九州大学医学部卒)の意志と仕事を次代に伝えるため、2021年3月、氏の活動母体であったペシャワール会との相互協力協定を締結し、同会協力の下、「中村哲先生の志を次世代に継承する九大プロジェクト」を立ち上げました。

その5周年の節目にあたり、2026年3月21日(土)、これを記念したイベント『中村哲九大プロジェクト5周年:未来への水脈―問いをひらく』を中央図書館4階Sky Cute Commonsにて開催しました。当日は、学生・教職員、ペシャワール会関係者、一般市民の方々、その他講師やスタッフを含めおよそ90名が会場に集いました。

中村哲九大プロジェクト5周年:未来への水脈―問いをひらく

開会挨拶  動画▶

九州大学の内田誠一理事・副学長が開会の言葉を述べました。イベントタイトルの「未来への水脈」について、中村哲医師が築いた灌漑水路になぞらえながら、本プロジェクトがその仕事や思想を未来へ届ける取り組みであること、また、「問いをひらく」という副題には、中村哲医師を単に知るだけでなく、現代の課題を考える対話へとつなげたい想いを込めたと語りました。

続いて、ペシャワール会会長の原祐一氏からのメッセージを代読にて紹介しました。原会長は、中村哲医師の活動について「医療という枠を超え、人が生きる基盤そのものを支えようとする静かな覚悟」であったと振り返りました。また、「中村哲著述アーカイブ」に新たに公開された「中村哲の本棚」を「思想の源流をたどる貴重な資料」と述べ、「書物に向き合い、問いを重ね、現場で実践へと結実させた軌跡は、これから研究を志す若い世代にとって大きな導きとなる」とメッセージを寄せてくださいました。

報告:5年間の歩み―中村哲記念講座(鏑木政彦)
動画▶

報告:5年間の歩み―中村哲記念講座(鏑木政彦) 九州大学大学院比較社会文化研究院教授の鏑木政彦氏が、九州大学の全学部の学生を対象とした授業科目「中村哲記念講座」の取り組みを紹介しました。2021年度の開講以来、講演とグループワークを組み合わせながら授業内容の試行錯誤を重ねてきた本講座は、中村哲医師の生涯を知り、その仕事の意味を考えることを通して、学生が自身の学びの意味を深める機会となっています。また、中村哲医師の地域協力の考え方を継承しながら、「地域協力の思想と実践」へと授業を展開させていく構想を語りました。

講演:中村哲先生と『論語』―天、共に在り(柴田篤)
動画▶

講演:中村哲先生と『論語』―天、共に在り(柴田篤) 九州大学名誉教授の柴田篤氏による講演では、中村哲医師が幼少期から親しんだ『論語』を手がかりに、その思想や生き方をたどりました。「己の欲せざるところは人に施すことなかれ」に代表される「恕」の精神や、「言に訥にして行いに敏ならんと欲す」といった『論語』の言葉を引用しながら、中村哲医師の実践との深い関わりを読み解きました。また、『論語』、キリスト教、イスラム教の間に通底する普遍的な価値観にも触れながら、中村哲医師が語った「天、共に在り」という言葉の意味を考えました。

講演:中村哲と水利事業(島谷幸宏)
動画▶

講演:中村哲と水利事業(島谷幸宏) 熊本県立大学特別教授・九州大学名誉教授の島谷幸宏氏に、河川工学の立場から中村哲医師の水利事業について講演いただきました。講演で島谷氏は、アフガニスタンでの灌漑事業によって荒廃した土地が再び緑を取り戻していった様子を紹介しました。また、中村哲医師が福岡県朝倉市の山田堰に学び、その伝統的な治水技術を現地の用水路建設に活かしたことを取り上げました。さらに、中村哲医師の実践を「ネイチャーベースドソリューション」の先駆的事例として評価する視点や、異なる分野や立場の人々を結び付ける「境界オブジェクトパーソン」として捉える意義を語りました。

報告:5年間の歩み―メモリアルアーカイブ、著述アーカイブ、中村哲の本棚(平野かおる)
動画▶

九州大学附属図書館職員の平野かおるより、「中村哲医師メモリアルアーカイブ」および「中村哲著述アーカイブ」の5年間の歩みを紹介しました。「中村哲著述アーカイブ」では、中村哲医師に関する新聞・雑誌記事、ペシャワール会報、現地活動記録映像など多様な資料を公開しており、登録コンテンツ数は2,000点を超えています。2025年11月には、ご自宅の本棚を撮影した写真と、その蔵書一覧からなる「中村哲の本棚」をあらたに公開しました。

これまでアーカイブの構築にご協力いただいたペシャワール会、著作権者、関係機関の皆様へ改めて感謝申し上げます。

特別企画:中村哲の本棚をのぞく会(進行 : 飯嶋秀治)
動画▶

九州大学大学院人間環境学研究院教授の飯嶋秀治氏の進行により行われた特別企画「中村哲の本棚をのぞく会」では、ペシャワール会理事・PMS総院長の村上優氏、九州大学名誉教授の柴田篤氏、熊本県立大学特別教授・九州大学名誉教授の島谷幸宏氏に加え、学生団体「哲縁会」から九州大学薬学部臨床薬学科の後藤梨花氏、九州大学共創学部の阪井翔大氏が登壇しました。

特別企画:中村哲の本棚をのぞく会(進行 : 飯嶋秀治) 本企画では、中村哲医師のご家族の協力のもと公開された自宅本棚の写真や蔵書リストを手がかりに、中村哲医師がどのような書物に親しみ、何を考え、実践へとつなげていったのかについて語り合いました。『夜と霧』や宮沢賢治作品、内村鑑三の著作をはじめ、河川工学や植物学に関する専門書など、多様な蔵書を通して中村哲医師の思想や活動の背景が垣間見えました。また、研究者による専門的な視点に加え、学生からも中村哲医師の著作や蔵書に触れて感じたことが語られ、本棚という身近な切り口を通じて世代を超えた対話が生まれました。中村哲医師を「知る」だけでなく、その思索や実践を新たな研究や問いへとつなげる可能性を感じさせる企画となりました。

閉会挨拶  動画▶

閉会にあたり、ペシャワール会理事・PMS総院長の村上優氏よりご挨拶いただきました。村上氏は、中村哲医師の活動や言葉、資料を体系的に保存し、次世代へ伝えていくことは大学だからこそ担うことのできる重要な役割であると述べるとともに、中村哲医師を直接知らない世代が増えていくなかで、本プロジェクトが今後も継続されることへの期待を寄せてくださいました。

最後に、九州大学の古田和之理事・事務局長が、ペシャワール会の皆様や本イベントの登壇者・参加者に感謝の意を伝え、会はお開きとなりました。

閉会後には、会場を30分間開放し、「中村哲の本棚」の展示を囲みながら、登壇者と参加者同士が自由に歓談する時間を設けました。それぞれが中村哲医師の言葉や活動から受け取った想いやあらたな問いについて語り合い、和やかな雰囲気の中で交流を深めました。

参加者アンケートでは「多面的な取り組みを重層的に感じられる素晴らしい企画でした。」「本を通して中村哲氏の幅広い人物像を改めて知ることができ、有意義な時間でした。」「中村哲さんの志がこのような形で継承されていくことに喜ばしく感じます。」といった声が寄せられました。

中村哲九大プロジェクトの5周年は一つの通過点です。九州大学はこれからも中村哲医師の志を大切に次の世代につないでいきます。

なお、本イベントの一部の講演資料等を九州大学学術情報リポジトリ(QIR)で公開していますので、ぜひご参照ください。

中村哲九大プロジェクト5周年 : 未来への水脈―問いをひらく:記録 

参考情報

中村哲九大プロジェクト5周年記念イベントチラシ 


(お問い合わせ)
「中村哲先生の志を次世代に継承する九大プロジェクト」事務局
MAIL:pj_nakamura@jimu.kyushu-u.ac.jp TEL:092-802-6246
九州大学附属図書館 eリソース課 リポジトリ係内

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