第61回貴重文物展示「続・雅俗繚乱 ―江戸の秘本・珍本・自筆本―」を開催しました

展示 中央

 九州大学附属図書館では、令和6年5月10日~6月29日にかけ、第61回貴重文物展示「続・雅俗繚乱 ―江戸の秘本・珍本・自筆本―」を開催しました。本学を代表する貴重書コレクション雅俗文庫をテーマにした展示会です。

 展示会では、川平敏文教授(九州大学人文科学研究院)に監修を務めていただきました。川平教授は、平成22年から、本学人文科学府の大学院生とともに、雅俗文庫の目録作成のための調査にあたられました。調査の半ば、平成27年には、1度目の展示会「雅俗繚乱―中野三敏 江戸学コレクションの世界―」を開催し、大変な好評を博しています。その後も調査は続き、開始から12年の歳月を経た令和4年に調査を終えました。今回、2度目の展示会は、調査完了を記念し、その集大成として、雅俗文庫の価値を研究者の方々や広く一般市民の皆様にお伝えするよう、企画したものです。

 展示会では、雅俗文庫の江戸期和装本およそ8,300点の中から、選りすぐりの65点を展示しました。展示会場は、図書館を飛び出し、フジイギャラリーという創造性を育む空間です。貴重な資料と美しい空間とが出会い、展示会は、見る者の心を穏やかさで、そして、知的な喜びで満たす雰囲気に溢れていました。

 展示設計には、様々な学部の学生や一般市民の方々にも興味を持っていただけるよう、多くの創意を凝らしました。例えば、彩り鮮やかな多色刷や、江戸期のハウツー本など、専門知識を問わず楽しく鑑賞できるコーナーを含む形で展示を構成しました。注目点を端的に表すため、展示品ごとに短いフレーズ(「下唇に注目」「盛れるメイク講座」など)を添えたのも工夫の一つです。また、展示構成に春本のコーナーを設けたことも果敢な試みでした。雅俗文庫には、俳画風に描かれた春画や影絵のみの春画など、一風変わった春本が含まれています。同文庫の特色を示す六つの展示コーナーのうちの一つとして、一定の配慮のもと、これを加えました。

 さらには、全ての展示品の解説パネルに、デジタル画像へのリンクのQRコードを掲載しました。観覧者が貴重書の現物をご覧になりつつも、スマートホンでQRコードを読み込み、当該資料の電子画像の細部を拡大したり、他のページをご覧になったりといったことが可能となりました。なお、展示資料の半数は、展示会の設計段階では、まだデジタル化されていなかったため、展示会に間に合うよう、これを機にデジタル化を実施しました。このデジタル画像を用いて、展示会の初日に電子展示のページを開設したことも大きな取り組みです。同ページでは、展示資料を数点ピックアップして紹介するとともに、各コーナーの展示リストを掲載しました。来場のきっかけとなるよう、会期終了までに定期的にピックアップ資料の更新を行いました。こういった一連の取り組みにより、雅俗文庫の魅力を余すことなくお伝えできたと自負しています。

 多くの皆様にこの展示をご覧いただきたく、開催期間はおよそ2カ月間にわたりました。近年、九州大学附属図書館が主催する貴重書の展示会で、これほどの長期間となったことはありません。長期間の照明の光から貴重書を保護するため、一部の展示品については、会期の途中で展示ページ替えを行いました。このページ替えによって、既に展示をご鑑賞いただいた方も、再度展示をお楽しみいただけるという効果もあったようです。

 展示期間中はおよそ1,000名の方々にフジイギャラリーへお越しいただきました。ご来場いただいた皆様、誠に有難うございました。来場者アンケートでは好評価のご意見を沢山いただきました。その一部を以下に抜粋いたします。

・とてもきれいです! 特に多色刷りの世界テーマ、雲母粉をつかって絵をかくのがとても面白くてきれいです。
・江戸時代の写本随筆をこうしてみるのは初めてでしたので楽しかった。またハウツー本の中にスキンケアの本があったことに驚きどの世も変わらないと改めて思いました。
・上田秋成の自筆がみられるなんて!感激でした。
・春画のところ、なかなかみれない、さすが大人の大学です。
・江戸の印刷・出版文化の豊かさを感じました。
・昔の資料が色彩やかに残っていてすてきでした。
・貴重な資料が見られて、車で片道1時間かけて来た甲斐がありました
・移動展示をお願いしたい。例えば、所属は違うと思うがアクロス等で!

 展示会場では、雅俗文庫の蒐集者である故・中野三敏氏(九州大学名誉教授)の在りし日の講演動画を常時投影しました。来場者からは、動画の視聴により、古文書保存と解読力継承の必要性に関して啓発された旨の感想がありました。中野三敏氏の教え子や縁の深い方々も多数ご来場になり、「映像で流れていた中野先生のお姿に涙が出ました」といったコメントもありました。

 会期中の5月18日には、監修者の川平教授によるギャラリートークおよび講演会を実施しました。講演会は「江戸文化の路地裏へ ―中野三敏が愛した和本たち―」と題しました。本学の学生や教職員だけでなく、他大学の研究者の方、一般市民の方など、江戸文化にご関心のある方々が多数足を運んでくださり、大変盛況な講演会となりました。また、講演の模様を、オンラインで同時生配信しました。当日オンラインで講演を視聴された方からは「展示の趣向や背景を知り、是非実物を観に行かねばという気持ちになった」といった感想をいただき、高い評価を得ました。

 伊都キャンパス・フジイギャラリーでの雅俗文庫の展示は終了しましたが、附属図書館ではウェブサイトに同内容の全てを電子展示として再構築し常時公開しています。鮮やかな多色刷り、希少な自筆資料、ユニークな春本など、雅と俗が織り成す江戸文化の魅力を電子展示でご堪能ください。さらに、川平教授による講演会についても、九州大学附属図書館の公式YouTubeチャンネルで動画を視聴することができます。あわせてご覧ください。

 また、展示会ではフルカラー・44ページの豪華な図録も作成しました。現在、九州大学デジタル資料整備事業へご寄附いただいた方への特典として、同図録を謹呈しています。5,000円以上のご寄附での特典となっています。ぜひお手元でお楽しみいただければ幸いです。(ご寄付の方法はこちら >>


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江戸文化の路地裏へ―中野三敏が愛した和本たち―(講演動画 76分)


お問い合わせ
九州大学附属図書館利用者サービス課サービス企画係
Mail: touservice@jimu.kyushu-u.ac.jp  TEL: 092-802-2481

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