音無文庫74タイトルをデジタル公開しました

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中央図書館所蔵の音無文庫74タイトルを九大コレクションでデジタル化公開しました。
音無文庫は、旧福岡藩士で、明治・大正期にかけて、東京大学理学部教授、国立天文台所長などを歴任した天文学者寺尾壽博士(1855~1923)が、引退後に伊豆伊東の音無川のほとりの閑居で蒐集していた国語学・国文学に関係する和本を中心とする旧蔵書(約12,000冊)です。
今年2023年は寺尾壽没後百年ということで、東京理科大学近代科学資料館にて企画展が開催され、改めてその業績が再評価されています。
九州大学では、国文学研究資料館「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」等のプロジェクトにより、音無文庫のデジタル化を進めており、今回は昨年度デジタル化した分を中心に公開しました。
音無文庫の書物には寺尾による書き込みが散見され、藩校修猷館において修得した漢学・国学の素養を背景に、かなり本格的な研究を進めていたことが窺えます。音無文庫を見れば、近代日本の数学天文学のパイオニアとは異なる、知られざる寺尾壽の姿が浮かび上がることでしょう。

資料一覧

九大コレクション > 貴重資料 > 音無文庫

『源氏物語注紫明抄』 室町末期頃写
 『源氏物語』の最初期の注釈書で、音無文庫本は書写年代も比較的古く、伝本上貴重な資料。

稲垣千穎自筆『詞道返(ことばのちかえし)』明治5年筆 
 稲垣千穎(ちかい)(1845~1913)は、国学塾「気吹舎」で平田国学を学んだ後、東京師範学校で教鞭をとる傍ら、教科書編纂に従事した。明治13年に音楽取調掛に就任し、里見義・加部厳夫とともに、最初期の唱歌作詞者となった。「蛍の光」の作詞者として知られるが、最近まで詳細な経歴や人物像については不明であった。序文には、明治初期の文部省において教科書編纂の中心となった榊原芳野(1832~1881)の「作良之印」の印が押印されており、筆跡も本文と異なることから、榊原の自筆ではないかと考えられる。稲垣と榊原の交友を示す資料としても注目される。

参考文献

田村隆「音無文庫」『九州大学百年の宝物』(丸善プラネット、2011)
寺尾新「寺尾壽」『父乃書齋』(三省堂、1943)
田坂憲二「九州大学附属図書館蔵『紫明抄抜書』について」(『語文研究』82、1996)
中西光雄『「蛍の光」と稲垣千頴 : 国民的唱歌と作詞者の数奇な運命』(ぎょうせい、2012)

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