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江崎悌三
江崎悌三先生(1899-1957)は、日本を代表する昆虫学者、動物分類学者です。大正12年に九州帝国大学農学部助教授、昭和5年教授となり、その後、九州大学農学部長、教養部長、日本学術会議会員、日本昆虫学会会長、日本鱗翅(りんし)学会会長などを歴任されています。水生半翅類分類の世界的権威で、国際昆虫学会議常任委員として国際的に活躍し、また、日本とその近隣のチョウ、ミクロネシアの動物相、ウンカの生態などの研究で大きな貢献を果たしました。
1936年から1939年にかけ、当時九州帝国大学助教授であった江崎先生は、南洋庁の委嘱により3回にわたり南洋諸島(現在の北マリアナ諸島、パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦に相当する地域)各地を訪問しました。その間に採集された昆虫ほか様々な生物は、27000点に及ぶミクロネシア産昆虫標本をはじめ、膨大な標本コレクションとして、今日、本学の農学部昆虫学研究室や総合研究博物館に収められています。
農学部の昆虫学データベース(KONCHU)では、江崎先生が新種として発表された昆虫を検索することができます。
- 九州大学昆虫学教室所蔵タイプ標本データベース(ELKUType)
- 上記データベースのうち、江崎先生が発表された新種の一覧
昆虫標本
江崎文庫
江崎先生はボーナスをすべてつぎ込むほどの文献蒐集狂で、奥さまはボーナスの存在すら知らなかったという逸話も残されています。その江崎先生の蔵書は、没後、農学部と附属図書館により購入され、現在「江崎文庫」として中央図書館の貴重書庫・準貴重書庫等に収蔵されています。主に農学・昆虫学関係の洋書と、本草学関係の和漢書からなり、このうち和漢書については順次電子化公開が進められています。
南洋諸島への出張記録
九州大学文書館では、九州大学における歴代研究者等の出張記録を保管しており、海外との学術交流を語る上でも貴重な資料となっています。
「教授江崎悌三南洋諸島ヘ出張ノ件」
国際文庫
九州帝国大学内に設置された国際文化事業団体である九州国際文化協会(1939~1943)が蒐集した、第二次大戦時における極東地域の政治・外交・文化にまたがる資料です。その中の写真資料は、同協会主催で昭和15年2月に玉屋で開催された新興アジア文化写真展覧会において展示された写真184枚が中心で、当時の本学教員がアジア太平洋地域で撮影した文化的写真(学術、記録、風景、風俗等)を集めたものです。農学部内にあった科学写真研究会(烏兎芻会、会長は江崎悌三教授)を中心として運営・実施されました。
著作一覧
参考文献
- 平嶋義宏「江崎文庫」(『九州大学百年の宝物』丸善プラネット,2011)
- 多田内修「ELKU昆虫タイプ標本」(『九州大学百年の宝物』丸善プラネット,2011)
- 多田内修「昆虫類一般標本コレクション」(『九州大学百年の宝物』丸善プラネット,2011)
- 石蔵甚平「九大における科学史文献」(『図書館情報』2(12),1966)
- 笹川滿廣「『虫の文化史』追補」(『京都府立大學學術報告. 農學』34,1982)
- 日比野友亮・望岡典隆「九州大学水産学標本室および農学部3号館より発見された江崎悌三博士による南洋諸島の魚類コレクション」(『九州大学総合研究博物館研究報告』第15-16合併号, 2018)
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