名家自筆本・古版本・古写本・地域資料等の貴重書をデジタル公開しました

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今年度までにデジタル化した中央図書館貴重書庫排架の名家自筆本(伝自筆本も含む)・古版本・古写本・地域資料等の貴重書(文庫に含まれる資料を除く)約230冊を九大コレクションで公開しました。
古活字版や板下稿本、発禁本など、出版文化史上興味深い資料も含まれています。名家自筆本では亀井昭陽、大隈言道など、福岡を代表する先賢の自筆資料を中心とし、漢学や和歌で優れた業績を残した彼らの息遣いや思索の跡を感じていただければと思います。

注目資料の紹介

奈良絵本『伊勢物語』 旧制福岡高等学校旧蔵

横本二冊から成る奈良絵本。挿絵は稚拙だが、在原業平の死を描く絵に鶴と亀が加えられるなど独自の描写が見られる。

亀井昭陽自筆『傷逝録』 文政年間

福岡藩の儒者・亀井昭陽(1773~1836)が綴った、わずか6歳で急逝した末子修三郎の追悼録。聡敏な愛児を失った昭陽の打撃は大きく、在りし日のことどもを深い愛情をこめ切々綿々と詳細に記している。

小林重治宛大隈言道書翰」 安政4年(1857)11月29日

江戸後期を代表する歌人・大隈言道(1798~1868)が大阪から飯塚の門人小林重治に宛てた書翰で、言道の大阪時代の生活ぶりを彷彿とさせる。小林重治は飯塚で代々酒造業を営み家は富んでいたので、言道が『草径集』を上梓するとき費用を援助している。
※本書翰については、統合新領域学府ライブラリーサイエンス専攻授業「ライブラリー資料論」を受講した学生さんが撮影したものです。

蓬仙茶話』 板下稿本 

幕臣・若年寄の川勝蓬仙(1828~1875)が著した煎茶の道具類を図入りで解説した書で、本書はその板下草稿本。刊本と比較することで、出版に至るまでの過程を窺うことができる。「全国図書祭記念大展覧会」(1934.11.2~4、出品目録)の「板下稿本」の部に、『黄巾雑話』とともに出品されている。

初版本『海国兵談』 寛政3年(1791)刊 元山元造旧蔵

寛政の三奇人の一人である林子平(1738~1793)が著した国防論の先駆けとして名高い書の初版本で、絶板処分を受けたため、現存するものは極めて稀である。初版本には、「千部施行」「林子平蔵板」の朱印と、子平の憂国の情を表した「傳へては我日の本のつはものの法の花さけ五百年の後」の朱印が捺されている。絶板後、『海国兵談』は木活字や写本にて伝えられた。

デジタル化資料一覧

分野刊・写著者・編者・書写者タイトル年代備考
仏教高野版 三教指帰天正8年刊 
仏教写本 江湖集聞書江戸期 
物語古活字版太田牛一輯 / 小瀬甫庵撰信長記元和寛永年間刊江戸時代初期の儒医の小瀬甫庵(1564~1640)が、太田牛一『信長公記』を改編し、創作を交えて著した織田信長の伝記
物語古活字版 狭衣元和中刊平安中期、永承・天喜年間(1046~1052)の成立といわれ、狭衣大将の恋愛生活を描いたもの
物語嵯峨本覆刻整版本 伊勢物語江戸初期中川忠英旧蔵
物語写本藤原経孝写伊勢物語寛文元年写 
物語奈良絵本 伊勢物語元禄頃旧制福岡高等学校旧蔵
物語奈良絵本 たいしょくくわん江戸期大織冠藤原鎌足公と契りをかわした讃岐国支度の浦の海女が、龍王に奪われた興福寺への寄進の宝珠を一命を捧げて鎌足のために奪い返す物語
物語写本 はつかつき江戸初期森田柿園旧蔵
和歌写本藤原顯輔撰 / 尭憲筆詩花和歌集室町期 
和歌写本 古今和歌集聞書中世末~近世初期 
和歌写本 後水尾院勅講抄江戸期 
和歌写本 三吟和歌并三知抄江戸期 
和歌写本 詠歌諸制之言葉江戸期野村良恭旧蔵
和歌写本 和歌切紙秘伝書江戸期会津若松堀金福秀旧蔵
和歌写本 詠歌伝書江戸期 
和歌写本 詠歌大本秘訣元禄5年写 
和歌写本 和歌口伝極秘江戸期 
和歌写本伝北村季吟自筆藤川百首拾穂抄江戸期中里常守旧蔵
和歌稿本伴蒿蹊述国歌私言明和7年廣田常善旧蔵
俳諧刊本 発句帳江戸期 
俳諧刊本友鷗撰芳里袋元禄7年刊 
俳諧写本向井去来著 / 松梅堂居鳳写落柿舎旅寝誹論享保13年写芭蕉の高弟去来が蕉風俳論の解釈について述べたもの。岩波文庫本底本
儒学写本伝藤原惺窩自筆書入周易啓蒙通釈室町末期写蔵書印「冷泉府書」
郷土先賢写本貝原益軒 編音楽紀聞江戸期 
郷土先賢刊本安東省庵著 / 安東侗庵校定 / 安東仕学斎梓行省庵先生遺集江戸期小津桂窓旧蔵
『安東省菴集』(柳川市、2002)影印底本
郷土先賢草稿 古賀精里草稿江戸中期 
郷土先賢墨筆亀井南冥自筆山司計自聞菴八勝寛政4年筆草香江や金竜峰(背振山)など筑前の八景を一首づつ詠じた五言絶句
中村孫次郎旧蔵
郷土先賢稿本亀井昭陽自筆周易僭考文政年間亀井昭陽が『易』に対する諸家の注に批判を下しながら自説を注したもの
梅野満雄旧蔵
郷土先賢刊本(書入本)亀井昭陽自筆校註毛詩鄭箋享和2年刊
書入は文政年間
亀井昭陽自筆の書入本で、詳細な書入は全て後の『毛詩考』の著述の基礎となった
梅野満雄旧蔵
郷土先賢稿本亀井昭陽自筆毛詩考天保年間亀井昭陽が『詩』に対して考注を施したもの
梅野満雄旧蔵
郷土先賢刊本(書入本)亀井昭陽自筆校註春秋左伝安永6年刊亀井昭陽自筆の書入本で、後の『左伝纉考』の著述の基礎となった
梅野満雄旧蔵
郷土先賢写本(書入本)亀井昭陽自筆校註太玄経文政年間亀井昭陽が弟子の宮崎英軒に書写せしめて自ら校注を施したもの
梅野満雄旧蔵
郷土先賢写本亀井昭陽著成国治要江戸後期寛政3年に山陽地方に遊んだ19歳の亀井昭陽が著した経世済民の書
但馬出石藩主仙石政固旧蔵
郷土先賢写本亀井昭陽著烽山日記江戸後期亀井昭陽が烽火番の役目についた際の体験を日記体で書いたもの
但馬出石藩主仙石政固旧蔵
郷土先賢稿本亀井昭陽自筆傷逝録文政年間亀井昭陽が綴った、夭逝した末子修三郎の追憶録
郷土先賢写本亀井昭陽著傷逝録江戸後期『亀井南冥・昭陽全集』(葦書房、1979)影印底本
郷土先賢稿本曇栄自筆幻庵雑記江戸中後期亀井南冥の弟で筑前崇福寺の住職・曇栄の自筆本
郷土先賢写本伊藤常足自筆屠児考江戸後期岡田陽一旧蔵
郷土先賢稿本大隈言道自筆批点仲秋巻一江戸後期大隈言道の月次歌稿集
郷土先賢稿本大隈言道自筆陸田雑謌安政4年筆梅野満雄旧蔵
郷土先賢写本大隈言道自筆太宰府賦并序安政5年筆安楽寺=天満宮・観世音寺・学業院等、太宰府の歴史と当時の状況を述べたもの
文学部蒐集の別の自筆本あり
郷土先賢稿本大隈言道自筆いまはし集安政6年筆大口鯛二旧蔵
郷土先賢稿本大隈言道自筆大隈言道家集安政6年筆大口鯛二旧蔵
郷土先賢稿本大隈言道自筆続草径集江戸後期梅野満雄旧蔵
郷土先賢書簡大隈言道自筆大隈言道書翰江戸後期飯塚の門人小林重治宛の書簡を中心とする大隈言道の書簡で、門人野村望東尼からの書簡を附す
地域資料稿本末永虛舟自筆筑前早鑑宝永6年筆筑前一国の分類形式の地誌
地域資料写本村上量弘著佐賀表承合書近代天保12年(1842)の久留米藩士村上量弘の佐賀藩視察報告の写
地域資料写本田邊茂啓編長崎実録江戸期駿河富士大宮薬舗鍵屋吉澤忠蔵旧蔵
地域資料稿本平山棐自筆津島紀事文化8年筆対馬の地誌
鈴木棠三編『津島紀事』(東京堂出版、1972-1973)影印底本
地域資料写本香西成資著南海通記江戸期四国の通史
序文は竹田春庵
江戸小説板下稿本欺雪園梨月著黄巾雑話江戸後期竹田出雲の浄瑠璃本『菖蒲前操弦』を種とした小説の板下稿本(刊本は未確認)
茶器板下稿本川勝蓬仙著蓬仙茶話江戸後期煎茶の道具類を図入りで解説した書の板下稿本
刊本もあり
武具写本伝伊勢貞丈自筆義家朝臣鎧着用次第江戸期鎧兜の着用の手順を図入りで解説した書
海防初版本林子平著海国兵談寛政3年刊国防論の先駆けとして絶版処分を受けた『海国兵談』初版本
元山元造旧蔵
本草写本小野蘭山口授 / 妻木直 講 / 橘春徳筆記本草綱目記聞江戸後期本草学者小野蘭山の『本草綱目』講義の筆録にもとづく写本
救荒本草記聞』もあり
辞書写本ドゥーフ著 / 吉雄権之助等訳道訳法留馬(ドゥーフ・ハルマ)江戸後期蘭和辞典
辞書刊本桂川甫周編和蘭字彙 A-N O-Z安政2年刊蘭和辞典『ドゥーフ・ハルマ』を改訂増補

以上の資料の中には、日本学術振興会大学教育再生戦略推進費「デジタルと掛けるダブルメジャー大学院教育構築事業~Xプログラム~」の採択事業である「ウェル・ビーイングの実現に貢献する高度人文情報人材養成プログラム:人文学×データサイエンスによる「人文情報学」大学院の設置」、国文学研究資料館「日本語の歴史的典籍の国際共同研究ネットワーク構築計画」及び「データ駆動による課題解決型人文学の創成プロジェクト」等の一環としてデジタル化したものも含みます。

参考文献

・中野三敏「林子平著「海国兵談」初版本」(『九大学報』1078、1973)
・阿部隆一「亀井南冥昭陽著作書誌」(『斯道文庫論集』16、1979)
・「第一回中央図書館貴重文物展観目録 : 中央図書館所蔵筑前郷土資料」(『大学広報』350、1979)
・田村隆「奈良絵本」(『文献探究』49、2011)
・進藤康子「大隈言道研究年譜編第Ⅱ部第Ⅲ部Ⅳ部」(『九州情報大学研究論集』17~19、2015~2017)

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