ワルエルダはスペイン出身であり、１６世紀の中頃にヴェサリウスが打ち立てた近代解剖学をスペインに初めて移入し広めた医家である。ワルエルダの解剖書の原典は Historia de la composicion del cuerpo humano escrita por Joan de Valverda de Hamusco, Roma, 1556, impressa por Antonio Salamanca y Antonio Lafreij というタイトルであり、ヴェサリウスの「ファブリカ」を底本にしながら、１５５６年にローマにおいてスペイン語で出版したものである。

解体新書の扉絵は、このオランダ語の訳本（１５６８ないし１６１４年刊のアントワープ版）の表紙絵から採ったものと推測されている。

ここに掲げた「ワルエルダ解剖書（１６４７年、アムステルダム版）」は、岩熊哲氏の考証（岩熊哲著、「解体新書を中心とする解剖書誌」、昭和１８年、婦女子新聞社刊、東京）によると、昭和初期（昭和４年、大阪朝日新聞社主催の開国文化大展覧会に「和蘭解剖書」として出品されている）に松江市の篤志家桑原羊次郎氏が所蔵されていたもののようで、現在本書の来歴を調査中である。（佐藤　裕）

『ヴェザリウスおよびワルエルダの解剖学　ー　人体の各部の図および解説』アムステルダム、１６４７年。

ワルエルダの口絵。 175 x 275mm	日本で作られたもの。 180 x 280mm	解体新書の口絵。