「東西の古医書に見られる病と治療 − 附属図書館の貴重書コレクションより」


Special Exhibition: Diseases and Cures as Seen in Old Eastern and Western Medical Books
Kyushu University Library, 10 - 17 May 2007


内容

西洋医学と東洋医学を対立させる形で現在の医学・医療を考えている人は少なくないが、19世紀以前に遡ると、相違点と同時にいくつかの類似点も見えてくる。洋の東西を問わず、古代の人々は身体を小宇宙として外界の大宇宙と対比させる形で理解しようとしていた。また両宇宙の均衡、バランス、調和とその崩壊も当初の共通観念であったと言える。その後、中国医学は外科学を軽視し、鍼灸及びいわゆる漢方薬に専念し、一方西洋医学は魂(精神)と身体をより鮮明に区別するようになり、さらに近世物理学の発達により身体は一種の器械と見なされたので、治療の対象は次第に狭められ、医学と医療の細分化を招いた。

 展示のもう一つの重要な視点は、医学・医療の発達と異文化交流との関係である。日本の医学の近代化は、西洋医学の単なる流入によって起こった訳ではなく、東西の文化関係は一方通行ではなかった。西洋医学の様々な知識が東へ伝わる一方で、中国医学の針術は、日本の独自性が加わった形で出島商館医を通じて西洋へ伝わった。また、画期的な牛痘法を導入する前に、すでに中国から伝わった人痘法を積極的に研究し、この予防接種への理解を深めてもいた。

 三つ目の要点は、西洋医学における倫理的側面の認識である。古代ギリシャのヒポクラテスの「誓い」から18・19世紀のフーフェランドの「医戒」まで、西洋の医師たちは、医者という職務、医療の倫理などについて常に様々な貴重な提言を行ってきたが、彼らが唱えたことの多くは現代においても非常に意義深いものに思われる。


展示会
日時:5月10日(木)〜17日(木) 10:00〜17:00 中央図書館2階特設展示コーナー

図録
『東西の古医書に見られる病と治療 − 附属図書館の貴重書コレクションより』九州大学附属図書館、福岡、2007年5月10日、30pp。
|| pdf (Kyushu University Institutional Repository ) ||

企画展示「「疫病」から伝染病へ− 平成19年度附属図書館貴重文物展示会より
展示場所:中央館2階常設展示コーナー
展示期間:平成19年5月24日(木)〜