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平成15年度 開学記念中央図書館展示会
昭和28年大水害写真・資料展

「昭和28年西日本大水害」の概況

元九州大学附属図書館専門員  

園  田  國  昭

1.はじめに

福岡県下の大水害としては、明治22(1889)年7月の筑後川氾濫がある。増水が昼間であったため人的被害は少なかったが、家屋の流失・全半壊は1200余戸であった。それから60数年後の昭和28年大水害はこれをうわまわるものであった。「百年確率の大雨」(松尾春雄当時九州大学教授)の概況を略述する。

2.昭和28年6月の気象・降雨概況

昭和28年下旬日別降雨量  9時〜9時  単位:ミリ
(旬計は、6月21〜30日の合計。門司は4日間の合計)

25日26日27日28日旬計
門  司167.024.856.0398.3646.1
飯  塚235.513.6105.9132.3534.8
福  岡307.825.7119.9168.0657.0
矢  部395.0168.4142.6218.6993.6
久留米317.289.187.261.8589.1
日  田292.4129.8178.799.0734.4
大  分197.7223.1143.6140.0741.2
佐  賀366.598.690.727.2613.4
三  瀬360.568.2130.5148.5777.4
熊  本76.1411.936.471.5640.9
黒  川119.7500.297.7170.81,042.6

昭和28年梅雨は、平年より半月も早い5月下旬に始まり、梅雨明けも平年より10日くらい遅い7月20日頃で、非常に長期間続いた。九州中北部では、「昭和28年西日本大水害」と呼ばれることになった、6月下句の集中豪雨に先立ち、6月4〜7日に長崎県北部および熊本県中部を中心に、続いて17〜20日には熊本県中部に、400ミリ前後の降雨が前兆としてあった。また、梅雨前線の活動地域が、九州南部よりも中部以北に集中したこと、多雨陽性型で平年の4〜5倍の降雨量を記録したことなどが特徴的であった。

6月25日朝から激しく降りはじめた雨は、26日にかけ300ミリ前後の集中豪雨となった。25日17時、福岡管区気象台は、「梅雨前線が中部九州にあって、なお北上していますので、県下全般に大雨になるおそれがあります。...雨は明日も続き、雨量は100ミリないし150ミリに達する見込で、低い所では浸水し、又崖崩れなどの水害が発生するおそれがありますから御注意下さい。」と、最初の「大雨注意報」を発表しているが、予測を超えていたようにみえ、以後「大雨警報」が発せられてゆく。そして、29日19時、「大雨注意報」は解除される。この間の主要地域の降雨状況は上表のとおりであった。

3.九州・山口各県の被害概況

国家地方警察福岡管区本部の7月30日現在調査による被害概況は次表のとおりである。


福  岡大  分佐  賀熊  本長  崎宮  崎鹿  児  島山  口
死          者259555933921125759
行  方  不  明271331981242
負    傷    者1,40223933755826171962,775
建物被害(戸)全壊1,3213333191,009320101293,441
流失82965310885012412,493
半壊破損12,1161,4354,42510,4125462982329,588
床上浸水92,5326,17637,89549,0386,32410218,302200,298
床下浸水119,12718,51338,05339,60716,28512352820,659252,895

また、九州北中部5県がそれぞれ最終的に発表した被害金額は、福岡県793億円、大分県178億円、佐賀県249億円、熊本県850億円、長崎県91億円となっており、その総額は2,161億円に達した。